恋は盲目。

猫も杓子も惚れた腫れたの好いた逸(それたの、幼稚園児からじーちゃんばーちゃん老若男女、恋愛バナシにくびったけ。
TVのワイドショーでは芸能人のゴシップ持ちきりで、芸能音楽有名著名なくとも人は恋をするのです。

人は何故生まれたのか。
恋をする為である。


その出会いは偶然か必然か。
男女はいつでも惹かれ合い、逢いたくて逢いたくて震えるのです。
紳士淑女の社交場はもちろん、同窓にクラブ活動、友だちの紹介。

そして、職場で。




これからお話するのは、コンビニ店員とお客さまの、ひと夏の恋物語。

寄り添う恋人同士の後ろ姿

 
コンビニでの恋愛は珍しくもありません。
アルバイト同士が出会い付き合い、なんてことはしょっちゅうです。
お店の店長マネージャーが付き合いはじめたり、店長とアルバイトが恋仲になったり、なんてこともあります。

かく言う私も職場内で出会い、恋人を作った経験もしばしば。10年以上勤めていると、1人や2人、3人や4人、浮いた話もあるってものなのです。
しかしながらコンビニに限らず、職場での恋愛は別れちゃったら後が大変です。お互い気まずいし、周りの仲間も気を使います。

ほかには、可愛い店員さんがお客さんからラブレターをもらった、なんて話もたくさんございます。

逆に、店員さんがお客さんを口説いちゃう、そんなことは滅多にないと思いますが、実はその例を体験してしまった私です。

はい。

はいじゃないが。


コンビニ店員、愛に変わる女性との出会い。

花を握った髪の長い女性。

5月も半ば頃。
すでに日差しは強く夏を感じます。
私はコンビニ店員さん。
いつも夕方に来る、髪を赤茶色に染めた女性の来店を期待しておりました。

その女性はどうやら飲食店で働いているらしく、毎日メニューらしき用紙のコピーを刷りにくるのです。
そうしてコピーを終えると、必ず黒烏龍茶とラッキーストライクを買って帰ります。

果たしてその日もいらっしゃり、いつもと同じように彼女は黒烏龍をレジカウンターまで持ってきます。
「〜円です。
私がそう伝えても、いつものラッキーストライクは注文されません。

買うのを忘れているのかいないのか。
密かに、彼女に対して小さな恋心を抱いていた私です。例え事務的な会話でも、お話ができる!
打算も交え尋ねます。
「いつものおタバコは、よろしいですか?
そう伝えると彼女は、私に意外そうな顔をみせ、「あ、じゃあ…。
応えて、ラッキーストライクを買っていきました。


また次の日。
やっぱり黒烏龍茶を持って来た彼女は私にこう言います。
「ホントは禁煙してるんですよ笑。覚えてくれてるんだって昨日は思わず買っちゃいました笑。
笑顔の彼女にトキメク私。

しかしながらいつもの事務的会話より、くだけた感じの言葉遣いに慣れずまごついた私は、「あ、はい。」なんてことしか言えません。

彼女から話しかけてくれたのに、折角のチャンスを…。


恋はいつでも強行突破!

バットとグローブを持ってくる野球部の美人マネージャー。

彼女はいつも、彼女が働くお店のロゴ入りユニフォームを来て来店するのです。
ですから、彼女がいる場所は判明しております。

彼女の店に行こう!
自身の不甲斐なさが身にしみた私は、後輩(イケメンを誘ったのです。

「えぇ、僕これから予定が…。
何時から?まだ時間あるでしょ?
理由詰めに次ぐ理由詰めで先輩の権限を存分に発揮した私は、いやがる後輩の襟を掴み引きずってゆくのでした。


彼女のお店に入る私と後輩。
席への案内は男性スタッフでした。
個室に案内されるあいだ、チラッと見える厨房に彼女の姿を確認します。
「いま、いましたよね?(ニヤニヤ
あんなに嫌がっていたクセに、後輩は私にちゃちゃを入れてきます。

先にお通しと、ドリンクが運ばれてきて乾杯をいたします。

「で、どうするんです?
と、とりあえず何かお料理を注文しよう…。


ぱぱっと、メニューで良く目にするモノを決めて注文します。
注文を取りに来たのも別の店員さんでした。
「彼女、なかなか来ませんね…。
い、いや今日はホラ、様子見だから…。

この期に及んでなにが様子見なのか全くわかりません。
彼女に逢いたくて来たはイイのですが、彼女に会ったら会ったでどうしてイイのかワカラナイ。


そうして、料理が運ばれて来。
彼女です。
お料理を運んで来たのは、彼女です。

後輩は仕切りの手前に座っており、私が先に彼女と目が合います。

刹那の沈黙があって。
「あ、どうもコンニチハ笑。
彼女がそう言うと同時に後輩も互いに気が付きます。


あっ、どうもあの…、いつもウチの店に来ていただいてるので、たまにはと思って…ハハハ…。
「そうなんですか?ありがとうございます!

彼女は私と、後輩に挨拶をし、注文した枝豆だとか唐揚げだとか刺盛りだとか愛を伝えたいだとか。


並べてゆきます。


「この人、お店に行こうお店に行こうオハナシしたいってチョーしつこかったんですよ笑
ちょぉ!
な、なにを言っとるんだコイツは!?
いy、違うんですあ!違っくはないんdすけどあ、そのあう!
後輩の突然の意想外の言葉に驚きつつ、彼奴の口をつぐもうとする私ですが巧いこと言えません。

「えっ!私も話してみたいと思ってたんですよぅ~♡

男が恋に落ちる瞬間


男はカンタンなのです。
彼女のその一言で、私は瞬く間に恋へ急転直下まっしぐら。



その後は、注文するたび彼女が承りに来てくれました。
合間に言葉を挟みます。
こちらも酔っ払ってきて、それなりに弾む会話。
「お名前なんて言うんですか?
グッジョブだ後輩!

名字は名札で確認できますが、肝心なのは次に繋がるお名前なのです。
私はデキル後輩の有能さに感服します。

「あ、私〇〇っていいます。

か、可愛いお名前ではないですか。
昔そんな歌があったなぁなどと考える私。
「なんておっしゃるんですか?

えっ!?オレ!?
彼女の申し出に恥ずかしながら、お伝えしないわけにはいきません。
むしろ聞け!

〇〇と、申しあす…。
若干かみながら、自分の名前を彼女に告げました。

「これから、〇〇さんって呼んでもいいですか?
構わんですとも!

いや、まさか、彼女が、私を、下の名前で呼んでくれるとは…。
モハヤ気分は有頂天の最高潮。この男、デレデレである。


そうして、その日はやっぱり後輩の予定があったので、早々にお店を出たのです。
彼女は、わざわざお店の外まで見送りに来てくれました。

「ありがとうとうございました!また明日、お店行きますね!


女性の気持ちを確かめたいなら女友達を連れて行け。

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後輩を無理やり連れて行ってから、1週間が経ちました。
強引に引きずって行ったのに、後輩(イケメンは仕事がデキルやつで、すべてを我に任さんとする勢いの彼に私は満足したのです。

否。後輩に満足しても仕方がないのです
なにしろ、私は彼女の連絡先も知りません。

1週間のあいだ、彼女は相変わらず私の勤めるコンビニに足繁く通うのですが、他愛もない会話を交わすくらいで、電話番号の「で」の字も聞けません。
聞けないことには電話も掛けません。

悪い印象はないと思うのですが、彼女は私をどう思っていうのでしょう。
後輩は「いけるんじゃないすか?笑」などと無責任に笑いますがしかし。

私は本気なのです。
本気で彼女と恋仲になりたいのです。


悩んだ私は、友人を彼女のお店に連れて行くことに致しました。
友人は女性です。
女性の気持ちを探るには女性に探ってもらうのが1番。なにしろ、染色体が同じなのですから。
遺伝子レベルで調査できるというものなのです。

しかし1つ気がかりが。
もしも少しイイナって思ってる男が、女連れで店に来たら嫉妬するのではあるまいか。
「大丈夫と思うで?わたしは"異性の友だちがいる、まともな男性"って評価できる。
友人はそう言います。
女性がそう言うのならば、そうなのでしょう。
今日は後輩でなく、友人にすべてを任せましょう。


友人を連れ添い、彼女のお店に行きます。
事前にお店には私の名前で予約しており、お出迎えは彼女でしたが私の隣にいる友人を発見、笑顔だった目が一瞬、曇りました。
「いらっしゃいませ。

私と友人を、彼女は席に案内しつつ開口一番。
「彼女さんですか?

えっ!?いや違います違います友だちですフツーの!!!
全力で否定する私。
「この人が、良いお店あるって言うんで今日は来たんですよ。
余裕でフォローを入れる私の友人。
「あぁ!そうなんですか!
突然テンションのあがる彼女。
ひとまず注文を取り終え、席を離れます。


「彼女、わかりやすいね。
えっえっなにが?なにが?
「さぁね…。
はぐらかす友人にヤキモキする私なのです。


程なくして、お料理が運ばれてきました。
「この人、よく来るんですか?
友人が彼女に尋ねます。

「今日で2回目、ですよね?
え、う、はい…。

「ぜんぜんしゃべらないでしょこの人。笑
「そうなんですよ~。私がお店に言っても全然話してくれなくて笑
ぬぇっ、のっ…。

私そっちのけで始まる女子会なのです。
この日は平日の早い時間で、お客はまだ私たちの1組だけでした。
「良くしてあげてください。この人、イイのは顔だけじゃないんで笑
「もちろんです笑。カッコイイですよね?笑

お世辞か本音かワカラナイ私。
ひとしきり、彼女は私の友人とお話をし、それからごゆっくり、と席を離れていきました。


「可愛い人やん。
やろー!?可愛いろー♡
「悪い感じはないと思うけど。連絡先交換した?
してない…。
「早くしいやねあんた。

そんなコトを話していたら、またも彼女がやって来。
「すみません、申し遅れました私〇〇と申します。
と、友だちに名刺を差し出しました。

そのあと、彼女は私にも名刺をくださいます。そこには。










号。


ゲットだぜ!
モンスターボールとスマホを握る手。


電波1つで繋がる愛がある。

スマホとモンスターボール。

次の日。お昼頃。
私はスマホを前に座し、自身の決意と格闘しておりました。







- - - 前日 - - -
「あれ?電話番号。やったやん。
えっこれっ!どうしたらいい!??
「電話かければ?
いつ!?
「明日とか?
なんて!?
「昨日はありがとうございました、とか?ってゆーか自分で考えや。相手も、考えなしに電話番号手書きで書いて渡したりせんわえ。


これは勝ち確定ではないのでしょうか。
名刺を頂戴し、その名刺には携帯電話の番号が手書きで書かれているのです。
いやしかし、そう易々と乗せられて良いものか。
私に取り入って、ツボや宗教、自己啓発セミナー果てはびじんきょく(つつもたせ、骨の髄まで搾り取るつもりではないのでしょうか。

いくら彼女が、背は低く髪はロングヘア、フェミニンかつ歳は私より2つ下の結婚適齢期であっても、私は惹かれたりは、惹かれたりは。

完全に籠絡しているのです。
有り体に言えば彼女が好きなのです。


そうと決まればかけようかけようソレかけよう。
prrrrrrr…


「…はい。
あ、あのっ!〇〇さんですか!?僕ですあの昨日お伺いした〇〇です!
「あぁ!昨日はありがとうございましたぁ。
あ、いや、コチラこそありがとうございました!あの、またお伺いしますノデ!
「あはは笑。私も今日ソチラ(コンビニに伺いますよ笑
あっ!いつもありがとうございます!僕も今日、夕方からシフトに入ってまして…ハイ。
「じゃ、今日も会えますね笑
あ、はい!

時間すれば50秒くらいでした。
それでも。

完全に籠絡しているのです。
有り体に言えば彼女が好きなのです。

いそいそと着替え出勤する私。
あせるな仕事は夕方まだ早い。


夕刻。
次店で働いていると、宣言どおり彼女がやって来ました。
「今日はお電話ありがとうございました。
あ、いえコチラこそ…。
この期に及んでまだモジモジする私です。

「LINE、送ったんですけど届いてますか?お名前が出たので。
えっ!なぁ、あ!あとで確認してみます。

彼女が帰った後、すぐさまLINEを確認する私。
『こんにちは!〇〇さんですよね?〇〇です!』

電話に続いてLINEもゲット。
すぐさま返信する私。
嗚呼、待ち受ける薔薇色の人生。
人は、恋をしている瞬間バラ色なのです。


次の日も一日中LINEでくっちゃべり、しかも互いに下の名で呼び合います。
コレは勝つる…!
あとは気合と勇気と漢気のみなのです!

お休み、いつですか?良かったらゴハンでも…。
私は、彼女をデートに誘いました。初デートです。
「OKですよ!明後日とか、いかがですか?


当日。
私が働くコンビニ近くの公園で待ち合わせ、彼女を待ちます。
少し遅れて彼女は到着します。
「お待たせしましたぁ。

自転車でやって来た彼女、髪は解かれどちらかと言えば派手めなモード系メイクに、ラインがはっきりでる服装。
好きである。
恋は盲目。彼女がどんな服装でも好きであるのですが。

「ドコいきます?
まずは、私の知り合いが経営するお店へ。
私は至極緊張し、彼女もまた緊張しているようでしたが、なんとかおしゃべりを始めます。
同郷で歳が近しいとなれば、学生時代の話です。
あの人は知ってる?とかあの先生は知ってるとか。

次第に2人は緊張も解けていって、会話も弾み始めます。


2軒めは、彼女の行きつけのバーへ。
そこのバーのマスターとは、いまでも私は仲良くしてもらってます。

馴染みのお店でお酒も廻ってきたのか、彼女は"ぢ"が出てきたように感じました。
実は、出で立ちは派手な彼女でしたが割と内面は内気で繊細、そして甘えん坊さんでした。


時刻はかぼちゃの馬車が迎えに来る頃。
私と彼女はお店を後にし、彼女の自宅が近くだというので、最寄りのコンビニまで送っていきました。
「もう、帰るの?
彼女は尋ねます。
すでに私と彼女は敬語からタメ口に変わっておりました。

私は、一度目から手をだすような度胸があるわけでもないし、飢えた青春真っ盛りでもないので、今日は帰るねと伝えてから、彼女とは別れました。何より、本気でしたので。

歩いて帰りながら、私は彼女に「もう少し、一緒にいたかった。」と、LINEをしました。
そうすると、すぐに彼女から「コンビニにいる時に、言って欲しかった。」そう返信がありました。


コンビニ恋愛♡お客とハジマル恋もある。

男性の足と、背伸びをする女性の足。

それからは何度も逢瀬を重ね、連絡先を交換してから1ヶ月半は経っておりました。
大抵デートはご飯を食べに行くのかカラオケか。
車で遠出をシたこともありました。
お互いの自宅を行き来するようにもなり、客観的には恋人です。

それでも、どちらから「付き合おう」との言葉はないまま、この関係を続けておりました。


ある日、私は彼女をデートに誘おうとLINEをしました。
今日会える?
「ごめん、今日は友だちと遊びに行くんだ。街にはいるから終われば会えるけど、でも何時になるかわかんない。
彼女は"街"の近くに住んでおり、私の自宅もまた"街"の近くなのです。
その日、私は彼女に会うのを諦め、男友だちを呼び出しカラオケに行きました。

男友だちが私に問います。
「彼女のことどうすんの?付き合ってるわけじゃないんでしょ?
んー、まぁ…。
「遊んでんの?遊ばれてんの?
遊んではないよ!遊ばれてるのかは、知らん。
「付き合ってって言った?
言ってない。
「付き合ってって言われた?
言われてない。
「はよ言え笑
んなこといったって…。

彼女の気持ちがワカラナイ私は、踏ん切りがつかないのでした。
「好き。」とは言われたのです。好きとも、言ったのですが。


しばらく男2人で歌いながら、そんなことを考えていると、スマホに着信がありました。
「もしもし~?〇〇?終わったよ~迎えに来て~
彼女は酔っ払っているようでした。

え、いま友だちとカラオケに来てるから、抜けらんないよ。今日は会えないって言ってたじゃん。
「会えないとは言ってないよぅ~。何時になるかわかんないって言っただけだし。べつに、〇〇がいいならいいよ。1人で帰る!
そう言って、彼女は一方的に電話を切りました。

「彼女?
そう…。迎えに来いって。
「いいよ、行っといで。
いいの?オレがお前を誘ったのに?
「べつに、ヒトカラなんていっつもやし。
すまん!


私は友だちに謝りを入れ、カラオケ店をでます。
狭い街といっても、彼女がどこにいるのかわからないので彼女の自宅へ向かうことに。
彼女は、自身が住むアパートの前で「鍵がない~」と座り込んでカバンの中を探しておりました。
そこへたどり着く私。

「あ、〇〇。来たんだ。友だちはいいの?
…、会いたかったから。
「そう…。

鍵を見つけた彼女は部屋に入り、寝始めます。
「寝ないの?
うん。寝よっか…。

私は彼女と横になります。
暗くなった部屋で、彼女は私の耳元で囁き。


「〇〇は、私のこと、好き?
好きだよ。

「私と、どうなりたいの?
怖くて言えない…。

「大丈夫だよ。言ってみて。
…。…。

「大丈夫だから…。ホラ、早く。

…付き合って欲しい。


「うん、いいよ。それじゃ今日から、恋人同士だね。


彼女の部屋には高窓があり、暗い部屋から大きな月が見えたのを覚えております。
時計の針は12時をまたぎ、奇しくもその日は、彦星と織姫が年に一度、逢う日でした。


The END。